チック症とは?症状・原因・治療!<大人もなるチック・音声チック>

このページでは

 

  • チック症ってなに?
  • 原因と症状
  • 診断基準
  • 治療方法
  • 大人のチックは治るの?

 

という点をわかりやすく説明しています。

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チック症とは?

チック症とは主に小児に多く見られる症状で、ほとんどの場合は一過性の発作が集中的に起こって、成長とともに沈静化していきます。

 

このような一過性の発作を「一過性・発達性チック」と呼んでいます。

 

この「チック」と呼ばれる発作が慢性・固定化し劇症化(症状がひどくなること)したものが病気としての「チック症」になります。

 

子供に多く見られる一過性・発達性チックは一種の癖のようなものとされていますが、小児精神科では「一過性の心身症」と捉えています。

 

また、病気としてのチック症である「慢性多発性チック症やトゥーレット症候群」は幼児よりももう少し大きくなった学童や思春期に多く見られる症状です。

 

「チック」の医学的な定義は以下のようになります。

 

“ある限局した一定の筋肉群に、突発的、無目的に、しかも不随意(ふずいい)に急速な運動や音声が起きるもの”(原文のまま)
です。

 

“ある限局した”ということは特定のきっかけによって集中して起こるという意味です。

 

また、“突発的、無目的に、しかも不随意に”ということなので、突然何の前触れや目的もなくしかも無意識に発作が起こることになります。

 

したがって、周囲も本人も強い不安を覚える場合がありますが、上記のように「チック症」にまで進展するよりは軽症のまま消失していく例の方がおおくなります。

 

つまり、チックそのものは幼児期にはよくあることなのであまり過度の心配はしない方が良いでしょう。

 

親が過度に心配するとそれがストレスとなり、症状が固定化してしまうことがあります。

 

これは先にも述べたようにチック症状は一種の心身症と考えられているからです。

 

心身症とは心と体のバランスが崩れることで起こる病気です。

 

まだ脳の発育途中の子供の場合は脳が成長する過程でチックのような状態になるのは十分ありうることなのです。

 

したがって初回は様子を見て、12ヶ月以上発作が継続するようなら小児科あるいは小児精神科を受診するようにしてください。

 

また、病気としてのチック症は放置していると大人になっても発作が起こることがあります。

 

治療については後ほどまた詳しく説明しますが、「チック症」という病気を治すというよりも、「チック症にかかった人間の心と体のバランスを調整する」というのが治療の柱となります。

 

したがって「チック症」という病気は薬や外科的な処置で完治するタイプの病気ではないということをまずはよく理解をしておいてください。

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チック症の原因と症状について

上記の定義にもあるようにチック症の主な症状は「急速な運動や音声」です。

 

しかもこうしたことが無意識に突然起こります。

 

「急速な運動」は運動チックと呼ばれ、どのような症状をきたすかといえば

 

  • 急な瞬き(瞬目):突然なんども瞬きを繰り返す
  • 首振り
  • 顔をしかめる
  • 口をすぼめる
  • 肩が上がる

 

などが挙げられます。

 

一方の「音声」の方は音声チックと呼ばれ

 

  • 奇声を発する
  • 叫び声をあげる
  • 咳ばらい
  • 鼻をならす
  • その場と関係のない単語を発する

 

などになります。

 

発症年齢は初発が3?4歳の幼児期が多く、最もピークを迎えるのが7?8歳の学童期で、男女比は3:1で男児に多いことがわかっています。

 

現在ではチック病を3つの時期に分け

 

  • 発達チック期:3?4歳頃で症状を起こす症例数は多いものの、成長とともに沈静化していくケースが多い
  • 慢性運動性あるいは慢性音声性チック期:治療を検討する時期(学童期以降)
  • 慢性多発性チック症(トゥーレット症候群)期:治療が必要な状態

 

に分かれています。

 

現在原因については身体の要因(脳の線状体の異常説)とストレスからくる心因的な要素とが複合的に折り重なって発症するのではないかと考えられていますが、詳細については不明です。

 

子供の精神的な発達には特に母親との関係が影響しているのではないかと考えられていますが、最近の研究では身体因説も重要視されています。

 

以下に小児精神科で用いられる「チック症の診断基準」を抜粋しておきますので参考にしてみてください。

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チック症の診断基準

I.一過性チック症

A.単一または多様性の運動または音声チックであり、1日に多数回起こり、少なくとも4週間以上は毎日のように起こる
B.12ヶ月以内の持続
C.トゥーレット症候群の既往がなく、かつ身体疾患や薬剤の副作用が原因ではないこと
D.18歳以前の発症

 

II.慢性運動性あるいは音声チック
A.運動性あるは音声チックのいずれか片方が、一日に多数回起こり、少なくとも12ヶ月間以上はほとんど毎日起こること
B.罹患している1年間において2ヶ月以上続く寛解(症状が和らぐこと)の時期がないこと
C.トゥーレット症候群の既往がなく、かつ身体疾患や薬剤の副作用が原因ではないこと
D.18歳以前の発症

 

III.音声および多発運動性の合併したチック症(ド・ラ・トゥーレット症候群)
A.多発性の運動チックおよび一つまたはそれ以上の音声チックが、疾患の経過中のある時期に存在したことがあるが、同時に存在するものとは限らない
B.チックは、1年以上にわたってほぼ毎日、1日に多数回であること。しかも、罹患している1年間において2ヶ月以上続く寛解の時期がないこと
C.18歳以前の発症
(以上原文のまま掲載)

 


チック症の治療方法

チック症はこころの病気です。

 

したがって、病気を治すというよりも患者さんの心をケアして心身のバランスが取れるようにすることが重要視されます。

 

また、初回発作時には一過性チック症である可能性が高く、この場合は特に治療をしなくても成長とともに症状が軽快し、やがて自然消失していくので問題はないでしょう。

 

問題なのは1年以上症状が継続する場合です。

 

小児精神科(小児専門の精神科)では比較的重症のチック症児童が多く、ハロペリドールやリスペリドンなど小児でも服用可能な向精神薬による薬物療法が行われることもありますが、そうでない場合は「遊戯療法(お遊戯や遊びを通して子供の健全な心の育成を試みる治療法)など行動療法的なアプローチ」が行われることになります。

 

また、患者さんの多くは子供ですが、特に母親との人間関係が重要視される病気なので、親へのカウンセリングが非常に重要とされています。

 

対応としては

 

  • 症状を誘発する緊張や不安の軽減あるいは除去
  • ストレスへの耐性(精神的な抵抗力)を高めること
  • 叱責や注意をできるだけ避けること

 

などが大切とされています。

 

したがって、症状を抱えている本人よりも周囲が症状を誘発しないように接し、その症状に本人がとらわれすぎないようにすることが治療の根幹になると考えてください。

 

それ以外の有効な治療法としては、運動によって発散させることに関心を向けさせ、もう一方では興味を抱いて熱中できる趣味を持たせることも推奨されています。

 

一過性チック症のように軽症の場合は小児科でも診察可能ですが、重症または多発長期化している場合には小児精神科に転科するように勧められることもありますが、そのような場合には主治医の指示に従うようにしてください。

 

特に精神科の薬は扱いが難しいので、一般診療科よりも専門の精神科の方が適切だと思われるからです。

 

中には自分の子供を精神科に通わせるのに強い抵抗を示す親御さんもいますが、治療第一に考えるようにしたほうが良いでしょう。

 

また、前述した通り親(特に母親)との人間関係の構築がうまくいかないことが引き金になることが多い病気ですので、子供と一緒に親も治療するという気持ちを持つことが重要です。


大人でも治る病気なのか?

チック症は基本的に18歳以下で発症する病気です。

 

そして多くの症例が成長過程で社会性や社交性、自主性を育む中で症状が軽減していきますが、何らかの原因でその発育が妨げられ、大人になっても症状が残る場合があります。

 

この場合は発達障害の一種になりますが、強いストレス環境にあった場合、発症が大人になってから起こる場合もあります。

 

大人のチック症も原因は精神的なストレスですので、治療において重要なのはストレスをいかに軽減できるかということになります。

 

大人のチック症は脳がすでに完成されている状態ですから症状が固定化しやすく、カウンセリングに合わせて向精神薬による薬物療法(デパス、ホリゾンなど)が行われることになります。

 

カウンセリングでは症状に合わせて認知行動療法などの行動療法的なアプローチが行われ、ストレスを上手に解消させる方法が検討されます。

 

また、ストレスを感じた時は自立神経訓練法や腹式呼吸などで精神を落ち着かせるようにします。

 

自律神経訓練法とは自律神経を意識的に調整する方法で、慣れれば一人でもできるようになります。

 

詳しいやり方は精神科や心療内科で教えてくれるはずなのでここでは概要だけを述べていきましょう。

 

 

自律神経訓練法

  • 安静になれる場所で寝るか椅子に腰掛け、全身の力を抜きゆっくりとします。
  • 呼吸は深呼吸を繰り返し、「落ち着く」と自分に言い聞かせ自己暗示をかけます。
  • 落ち着いてきたら脱力した手足から体温(あるいは熱感)を感じられるように神経を集中します。

 

これらの動作を3?5分を目安に行い解消する時はゆっくりと目を閉じたまま両手を上にあげ、深呼吸しながら徐々に力を込めるようにしていきます。

 

本来はもっと細かいプロセスがあるのですが、自分でできる自律神経訓練法はこの簡単な動作で十分と言われています。

 

一種の瞑想法に近いものですが、更年期障害やうつ状態など精神がアンバランスになりがちな時には一定の効果があるとされています。

 

大人のチック症はこうした行動療法や薬物治療を使った対症療法がメインとなります。

 

完治は難しいですが、対症療法を行うことで気にならなくなれば日常生活にほとんど問題はありません。

 

したがって根気よく病気と向き合うことが重要といえるでしょう。

 

同居している家族がいる場合には自分の病状を話し、協力してもらうようにしてください。

 

特に身近にいる人がストレッサー(ストレスの原因)になっている場合はお互いがカウンセリングを受ける必要性も出てきます。



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